セルフライナーノーツ

 

 

友人がnoteで短歌の解説をしてて、それが良かったので私もやろうと思う。自己満足の延長。

時折Twitter(@usagizushi0863) で披露する恥にすらならないちっぽけな31文字強(弱)ではあるが、やはりいいねが来ると嬉しい。とはいえかなり身内ネタな時もあるわけで、まあわかりやすく語弊のないように、どういう意味かいまいちわからんかったわ、という方へは是非。勝手なスペシャルサンクスを指(@Digital_usaGi)へ。

 

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・半袖のTシャツたちへと鼻をつけ漂う匂いに安心してる

 

この時期はまだ恋人(?)がいた頃で、いわゆるエモ系tankaであるが、まあ実際こうやって自分と実在するのかわからないような存在との繋がりを感じていたわけだ。いじらしくてかわいいと言ってくれ。毎回家に行くたびに洗濯をしてくれたのだが、「他人の家の匂い」が、その人のは特に好きだった。柔軟剤とその人の匂いがして安心できた。フェロモンの関係なのかは知らないが、この人の、この人の家の匂いが好きだ、と感じた人とは結構ずっと仲良かったりする。個人的には。まあサヨナラしているわけだが。人は水。

 

ニトリにて幼児のように戯れ合うまな板のサイズうろ覚え

 

これも同様であるが、私はあまりEx.恋人(?)と外出をしたことがないのだが、片手で数えられる程のお出かけの中にニトリへ行く、というものがあった。新しいまな板が欲しいということで2つのサイズで非常に迷った。私が選んだ大きめのサイズを買ったが実際に帰宅してみると買ったやつはかなり大きかった。なんだか異様に二人ではしゃぎながらいろんな家の道具を見た。

 

・メシアなどSNSにはいないのに今日も元気に徘徊する夜

 

私はかなりの寂しがり屋を営んでいるが、人にうまく甘えることもできず、だからといって没頭するような趣味もなく、何か面白いことないかな、誰かいないかな、くらいの気持ちでTwitterの画面をひたすらスクロールする。実際には何もないので「自分の爪、可愛いなやっぱ」と思うくらいなのだが。むしろ救いどころか劣等感に見舞われ、蜘蛛の糸を探す羽目となる。

 

・恋人に侵食されて色変わりつまらなくなった女の子たち

 

周りに一人はいると思うが、普段は面白くて仕方ないのに男の話になった途端に至極つまらなくなる女のこと。ついここ数日で大森靖子福田花音のことをそう言っていて、あんなにレベチでかわいい賢い歌うまお姉さんもそうなっちゃうんだ、と謎の親近感と安心感を得てしまった。メンヘラは揶揄されやすいが、みんなの中に要素は必ずある。人間臭くていいとは思うが、まあ実際は自分も近しい他人もしんどい。

 

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・髪ほどき束から解放され香る閉じ込められたシャンプーの匂い

 

髪がまだ長かった頃、仕事へ行く時よく一つ結びをしていたのだが、意外とお風呂に入る際にこの髪ゴムを取り髪の毛をゆすると微かにシャンプーが香る。その瞬間が私はたまらなく好きだ。

 

・星空など綺麗に見えなくてもよろしい思い出されるはサンテンイチイチ

 

お察しできるかもしれないが、私は東日本大震災の頃宮城県に住んでいてもれなく被災した。家も壊れて親戚の家に厄介になる前に体育館にて一泊した。中学校で卒業式の準備をしているときに地震があったのでずっと体育館にいたわけだが、夜、一緒にいた友達と落ち着かないまま外に出て、停電のおかげで皮肉なほどに眩く光る星を思わず綺麗だなんて思ってしまった。一方では少し離れたところで人が何千人と打ち上げられて死んでいて、暗闇に光るガラケーのヤフーニュースの見出し画面を見て、頭がおかしくなりそうだった。街中でみる夜空が綺麗だと陳腐ながらに当時が思い出されて泣けてくるので、あまり見えなくてもいいかな、という気持ち。

 

・真夜中の今出川通練り歩き死を渇望した友人恋し

 

この友人については以前このブログでも書いた。街頭の少ない夜道とは今出川通のことである。これはこの短歌のまま。会えるんだったら会いたいな。

 

・借りたまま羊も貴女も沈黙を貫き通してはや幾年

 

これも同じ友人について。彼女はとてつもない本読みで、割と知り合って序盤の方に『羊たちの沈黙』を借りたのだが、未だに全くよんでおらず、返さないまま音信不通となった。宇多田ヒカルが人間は元来寂しさを内に持っていると言っていたが、その寂しさの深淵を感じる。

 

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・後ろ髪引いてほしくて残してる襟足長めのウルフカットで

 

なんだかこれは今までの短歌のなかで1番いいねをもらったのだが、こそばゆい。ありきたりな女であり失恋をし髪をウルフカットにしたのだが、髪を切るのが少し惜しい気もあり、襟足は元の長さをそのままキープしてもらった。個人的に後ろ髪は引かれたくないが、誰かは私という存在をそのうち少しでも惜しいと思って後ろ髪を引いていてほしいのだ。と、当時は思っていた。ちなみに髪は引っ張られると痛いので絶対にしない方が良い。妹と喧嘩して学んだ。

 

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・流れゆく人間関係の楽譜に何十(層)ものロングトーン

 

投稿するときに誤って「層」の漢字をすっぽぬかしてしまった。最近関わる人の数が増えて嬉しい、それが綺麗な和音かどうか定かではないが、私の中に楽譜があり、関わる年月の長さだけ全音符が走っている。

 

・不協和音隣り合う粒の近すぎる距離がある方がちょうどいい

 

人間同士、関係が近すぎると小さなズレが生じてくることもある。微細なサンドペーパーの擦れ合いのようなものが起こり、お互いがすり減る。隣り合う音同士の和音は聴くのが辛い時もあるけど、一音分開くだけで綺麗に聴こえて、それは人間同士も同じかもねということ。

 

・単音で奏でる旋律は寂しくソナチネにすらなり得ない

 

音が少ないほうが覚えやすいし慣らしやすいけど、やっぱり一人だけでは少し寂しいし幅も狭まる時がある。己の中にやりたいことが無限にあって、人といることで制限されることもあるけど、私は割と他人と行動することで経験が広がることが多いので、そのうち協奏曲くらいになればいいな。知らんけど。

 

・鳴り響くケークウォークのステップをうまくできたらキャベツと呼んで

 

愛しい人のことをフランス語で「シュシュ」と呼ぶことを高校時代に知り、それすなわちキャベツという意味だそうだ。かたや私はゴリウォークのケークウォークという曲が好きで、弾けるようになりたいと思ったものだがまあピアノをやったことがない人間には難曲である。かなり好きなメロディ。今更調べたら、どうやらドビュッシーがシュシュ(すなわち娘)に書いた曲だったらしい。この短歌を書いてしばらくした後、「◯◯できたら愛してね」という書き方に、自分は典型的な条件付きの愛情の受け取りを経て生きてきたんだと痛感した。

 

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大学を卒業し、フリーターをしていたのだが、コロナ禍もあり色々と上手くいかず、一人枕を濡らすことも多々あった。もともとほくろができやすい体質で割とコンプレックスなのだが、うっすら泣きぼくろができた時は少し嬉しかった。

 

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スモール追記

 

・寝れてない明日か今日とかもはや無い安眠できる“今夜“がほしい

割と不眠になりがちなのだが、あまりにも起きすぎていると時計で定まっている日付が全て曖昧になりスペクトラムのなかを生きているだけの感覚に陥る。ちゃんと眠れたらそれは「今夜」となり「昨晩」となる感覚が私にはある。幼少期なぜか日を跨ぐことが怖かった。あとはお店の閉店時間。終わりを迎える感覚に恐怖心を強烈に抱いていた。

 

・青空に浮かぶ天使を見上げつつ食べたドリアは299円

 

私はサイゼリアが大好き。最近ドリア食べてないな。

 

・喫煙者肩身に狭くなったもの灰皿と共に路傍に立ち尽くす

 

オリンピックの影響もあり煙草を吸える店が極端に少なくなった。ラッキーストライクを吸う先輩と「サイゼは神」と言いながら寺町のサイゼリアでごはんを食べながら煙草を吸いまくった日が非常に懐かしい。この日はデトロイトという映画を観た。

 

・靴もないパジャマの金髪大学生メシアはキャッチの兄ちゃん姉ちゃん

 

実家で少し暮らしていたとき、案の定私は母親と反りが合わずよく喧嘩をしていたのだが、その日は冬で夜中ということもあり家を出ようとすると止められた。のでベランダから出てやった。しかも玄関に行けばバレるのでパジャマ姿の裸足で。今思い出せば1番頭が狂っていた時だった。駅の方まで行きぼんやりしているとガールズバーのキャッチのお兄さんとお姉さんに声をかけられた。クリスマスが近かったのでトナカイとサンタのコスプレをそれぞれしていて、とても見た目も派手だったが、コンビニでお茶と靴下を買ってきてくれたり、たくさん声をかけてくれたり家の近くまで送ってくれたりして二人とも本当に優しかった。別件で年始の電車で涙が止まらなくなり、知らないお兄さんが温かいコーヒーを買ってくれたこともあった。知らない人たちに大きく救われた時期だった。本当にありがとうございました。私はこの経験を側から見たらかなりヤバいが大事にしていて、同じような場面に出くわしたら同じように優しくできる人間でありたいと思っている。ちなみに買ってもらった靴下は穴が開くまで履いた。

 

 

ちょっと書きすぎちゃった。実はほんとはこんな解説なんかない方がいいのではとすら思い始めた。こっそりあげておく。